「景品表示法」とはどんな法律で、その目的は何かなどをご案内します。
ぎまん的な広告表示や過大な景品類の提供による不当な顧客誘引行為は、独占禁止法により「不公正な取引方法」として禁止されていますが、広告表示や景品類の提供は短期間のうちに実施され、波及性、昴進性を有するので迅速な処理を必要とします。
そこでこのような要請に応えるために、独占禁止法の特例法として、簡易迅速な手続で規制できるように、昭和37年5月15日不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)が制定されたのです。景品表示法は、平成21年9月1日、消費者庁の発足に伴い、所要の改正が行われ、公正取引委員会から消費者庁に移管されました。
景品表示法の全文は当連合会発行の法令集や、消費者庁のホームページ「表示」欄をご覧下さい。
景品表示法は、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止」して「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」を目的としています(第1条)。
内閣総理大臣はこの法律に基づいて「景品類」を指定するとともに、景品提供のルールを設けています。その内容は景品提供を全面的に禁止するものではなく、過大なものを禁止するものです。
まず景品類とは、「顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品・金銭その他の経済上の利益」であり、物品、金銭ばかりでなく株券・金券などの有価証券、映画や旅行などヘの招待・優待、自社用の自動車や建物施設などを使用させる便益、さらには清掃や配送などのサービスなど、経済上の利益はすべて含まれます。
ただし、正常な商慣習に照らして値引・アフターサービスと認められる経済上の利益又はその商品・役務の取引に付属すると認められる経済上の利益は含まれません。また、組合せ商品や詰合せ商品等も、原則として、景品類とはみなさないこととしています。
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公取委告示第3号、以下「懸賞制限告示」といいいます。)は、その対象が一般消費者であると販売業者であるとを問わず、取引に付随して、懸賞の方法により、景品類を提供する場合について景品類の最高額と総額の制限を設けており、景品類の最高額は取引価額の20倍(ただし最高は10万円)、景品類の総額は懸賞に係る売上予定総額の2%以下としています。また、商店街や業界が共同して実施する「共同懸賞」についても制限しています(下表参照)。
一般懸賞 | 懸賞に係る取引の価額 | 景品類限度額 | |
---|---|---|---|
(1)最高額 | (2)総額 | ||
5,000円未満 | 取引価額の20倍 | 懸賞に係る売上予定総額の2/100 | |
5,000円以上 | 10万円 | ||
共同懸賞 | 取引価額にかかわらず30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3/100 |
注=(1),(2)の両方の限度内でなければならない。
「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公取委告示第5号、以下「総付景品告示」といいます。)は、一般消費者を対象とし、取引に付随して、懸賞の方法によらずすべての相手方に、つまり「総付」で景品類を提供する場合の制限で、取引価額の2/10のもの(取引価額が1,000円未満の場合は200円のもの)まで提供できることとなっています(下表参照)。
商品の販売や使用のために必要な物品・サービス、見本や宣伝用の物品・サービス、自己の商品・役務の取引に用いられる割引券等、開店披露等に提供する物品・サービス等については、正常な商慣習に照らし適当と認められるものであれば総付景品告示の適用が除外されます。
景品類の提供に係る取引の価額 | 景品類の最高額 |
---|---|
1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引の価額の2/10 |
懸賞制限告示と一般消費者告示は、幅広い業種に適用されるものですが、特定の業種に適用される告示(以下「業種別告示」といいます。)もあり、業種別告示においては、一般的な規制よりも制限的な内容などが定められています。
現在の業種別制限告示は次のとおりです。
景品表示法では、不当表示を禁止していますが、景品表示法の対象となる「表示」とはどういうものかについても指定しています。
商品、容器、包装になされた表示、チラシ、ポスター、テレビ、インターネット、新聞、雑誌による広告からセールストーク、実演に至るまで、現在行われている表示・広告はほとんど網羅されています。そしてこの法律では、商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも「著しく優良」であると示すことにより一般消費者に誤認されるおそれがある表示、また価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に「著しく有利」であると一般消費者に誤認されるおそれがある表示を不当な表示として禁止しています。さらに、商品・サービス等の内容についての不当表示については、消費者庁は必要に応じて当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるようになり、当該資料が提出されない場合には、不当表示とみなされます(第7条第2項)。
また、これらのほか、一般消費者に誤認されるおそれがあると認めたものを不当な表示として内閣総理大臣が指定できることとしており、この規定により現在までに指定されているのは次の6件です。
消費者庁は、景品類の制限や禁止規定に違反し、又は不当な表示をした事業者に対し、その行為の差し止めや、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができます(これを「措置命令」といいます。)。
措置命令は、「当該行為がすでになくなっている場合においても、することができる」としています。 措置命令に不服がある場合は、不服申立て(異議申立て又は取消訴訟)をすることができますが、不服申立てをしない限り、この措置命令は確定し、確定後その命令に従わない場合、事業者の代表者等は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が、また、当該事業者は3億円以下の罰金が科せられます。
平成26年6月に景品表示法が改正され、同年12月1日から都道府県知事に対して、景品表示法違反行為に対する措置命令権限と不実証広告規制に係る合理的根拠提出要求権限が付与されました。
平成28年4月1日から施行された改正景品表示法により、不当な表示(優良誤認表示又は有利誤認表示)を行った事業者は、課徴金対象行為に係る商品又は役務の売上額に3%を乗じた額の課徴金の納付が命ぜられます。
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